2007年06月21日

しおじい(塩川正十郎 元財務大臣)の講演を聴いた。

 日興コーディアル証券が20日に東京・台場のホテル日航東京でひらいた特別講演会へ行った。
 元財務大臣の塩川正十郎氏、愛称「塩ジィ」が『これからの政治・経済の行方』と題して講演を行なった。
 また、資産運用セミナーとして、『日興SMA』の紹介を行なった。

 塩川氏の講演要旨は次のとおり。(私が聴いてまとめた内容なので、不正確な部分や勘違い・聞き違いがあるかもしれません。ご了承ください)

■統治システムを変える必要性

 公安元長官への朝鮮総連の不動産売買問題、年金の記録漏れ、政治とカネの問題、公共事業の談合問題など、いま、役所がおかしい。
 これまでの日本の国民性から来ているのではないか。
 官尊民卑であり、「お上は正しい」「お上に逆らわない」という風土である。

 国の統治システムや政治のやり方を見直す時期に来ている。
 つまり、政治や行政の結果を、検査するシステムを強化するべきだ。

 現在の国の予算は、一般・特別会計合わせて約二百数十兆円。この使われ方を監視・検査している検査員はたった1400人ほどだ。
 一時、「ムダな公共投資」の代表例として話題になった、小田原市にある「保養施設」など、ムダなお金の使われ方を誰も監視していないし、国民は批判しないできた。
 予算の使われ方を監視・監督し、その行政の結果を評価するシステムに、テコ入れする必要がある。

 また、公正取引委員会で、談合や、経済的弱者への不当要求(たとえば、いわゆる下請けいじめ)など、もっと監視すべきところが多くある。が、人手がまわらないでいる。

■公務員制度改革についての提言

 統治システムで、変えるべき点は、もうひとつある。
 公務員の人事制度だ。

 現在、全公務員約32万5000人のうち、約2万人が「窓際族」(閑職)だ。
 たとえば、むかしの食糧管理法にもとづく部門に、まだ7000人の人員がある。自然減を図りつつ、現在、行なっているのは、各都道府県へ赴任し、農林統計を出す仕事だ。が、これは農協が行なっている仕事を二重にやっているだけだ。

 そうした人たちを再教育して、前述した検査・監視する部門へまわせば、予算(人件費)を増やさずに、前述の施策は可能だ。

 加えて、公務員の定年を上げるべきだ。
 現在、行政官は「上」のポストがごく少ないため、50歳くらいで天下り先へ行くことになる。脂の乗り切った年代の、優秀な人材が流出している。この層の人材を、必要な、大事なポストへまわす体制をつくることで、天下りも必要なくなる。

 また、行政官(現在約2万5000人)と一般事務職(同約30万人)は、待遇や定年の年齢を変えるべきだ。

■教育改革について

 教育改革については、焦点をしぼる必要がある。
 ここでは、「教師のあり方」と「教育格差」を挙げる。

〈教師のあり方について〉
 現在の教師は、全勤務時間のうち、教える仕事と事務仕事に、半々くらい時間を取られている。もっと「教える」時間を増やすべきだ。

 また、教師自身が、世間知らずで、苦労や、人としての心得を知らない場合が多い。教師の教育・養成システムも、やり直していくべきだ。

〈教育格差について〉
 もうひとつの焦点、教育格差について。

 世帯年収1000万円超と、同500万円以下の世帯の子供では、明らかに教育格差が出ている。
 学力の格差は、いい大学へいけるかどうか、ひいては、いい会社に就職できるか、ひいては、高い収入を得ることができるか、に直結する。そして、さらにその子供に再生産されるので、家庭の格差が固定化される。

 格差の拡大・固定化は、社会の安定を脅かす問題となる。

〈格差の一例――労働分配率を上げるべきだ〉
 大企業(上場企業約5000社)・中堅企業(非上場7000〜8000社)のデータでは、2001〜2005年の比較で、経営者の年収は90%上昇した。一方、従業員は6.6%下落した。
 労働分配率は、2001年に76%だったのが、2005年には46%となっている。つまり、あとの54%は、配当金、償却、役員賞与などにまわったということだ。

 中小企業(資本金1億円以下、従業員30人以下、約650万社)では、経営者の所得は5%減少、従業員は5%上昇した。
 ただし、もともとの所得格差があり、大企業の従業員の平均年収は780万円、中小企業は470万円である。

 企業が儲けるのは良いが、労働分配率を上げるべきだ。その流れをつくるような税制も必要になる。

〈格差解消のための提言〉
 格差解消のための、もうひとつの施策としては、学校でシッカリ教えることだ。予備校や塾が不要なくらいの時間と内容で。

 現在は、ゆとり教育とかいって、学校で教える時間は、週たった30時間。それで遅い時間まで塾に通っているのが現状だ。そして、そうした子供がいい学校に入る。

 たとえば、夜8時以降は塾や予備校は営業してはいけない、子供に学習を強要してはいけない、と決めてはどうか。
 そうすれば、子供は自分の時間がのびのび持てて、ほんとうのゆとりができる。

 文部科学省の机上の理論ではなくて、民間や現場の声を反映した施策を立てるべきだ。

■年金・社会保障・消費税増税について

 現在の日本の経済成長は、年約2%だ。今年は好況なので3%近く行くかもしれないが。
 高齢社会にともない、必要な社会保障費は年4%増といわれる。
 この差額の2%分を、どこから捻出するか。「国の財政は早晩行き詰まるのだから、消費税を上げよう」という議論になる。

 が、果たしてそれで良いのか。

 消費税の増税分が全て、本当に社会保障に使われるのか?
 そもそも、社会保障の額や制度自体が、今のままで良いのか?
 日本の社会保障制度は、もっとちゃんとすべきではないか?
 年金の事務は、これまできちんとしていなかったのではないか?

 たとえばアメリカでは、年2回、全加入者に、
「あなたがこれまで支払った金額は、これだけです」
「あなたが将来、毎月受け取れる金額は、これこれです」
と、レポートを送付する。

 日本には、そうした制度はない。「お上のやってることに間違いはない」と、「おまかせ」の国民性だ。未だに民主国家ではなく、官僚統制国家だ。
 国民が、前述のような疑問について、考える時期に来ている。

 私なら、
「あわてて財源確保のために消費税増税を行なう必要はない」
「たとえば、保険料負担と給付を、今後10年固定すると決める」
「これからしばらく上がり続ける社会保障費の、この部分だけは、一時的に増税して補う」
といった施策で良いと思う。社会保障費は、永遠に上がり続けるわけではないからだ。

 今夏の選挙は、「年金」が焦点のひとつとなりそうだが、政治の役割は、年金制度を「なおす」こと。そして、「これから、こうする」とビジョンを示せる政党・政治家に投票したいところだ。


posted by 田北知見 at 17:24 | 東京 ☀ | Comment(2) | TrackBack(2) | あの業界!こう見る
この記事へのコメント
塩じい、なかなかいいことを言いますね。
行政評価システムの導入は、早急にやるべきですね。その人員は、民間出身者半分、(有能な)公務員半分位の比率がいいと思います。トップは民間人がいいですね。巨大組織の悪いところは、自分たちが間違っていることに気付かないところだと思いますから、外からの血を大量に入れるべきです。
私は、労働基準法を見直して、公務員には10年毎の定年制を導入すればいいと思っています。10年毎定年→再雇用(民間からの採用組と競争)。制度的「あらかじめ定められた強制リストラ」です。採用したけど役に立たない公務員をどう飼い殺すかという問題を解決するには劇薬だけれど特効薬だと思います。60歳で公務員ひとすじと言うとみんな尊敬のまなざしでみられますよー。解雇というと聞こえが悪いけれど、任期満了退職というと再就職もしやすいでしょう。リスクの少ない公務員なのですから、せめて契約更改のリスクくらい背負っても労働者の権利の侵害にはあたらないと思いますけどね。

「短期間増税論」大賛成です。高齢化社会到来のドサクサで恒久増税しようとしている官僚は、「ベビーブーマーが生きている間だけ増税すればいいじゃん」と言われて「しまった、気付かれた!」と思っているかも知れません。

塩じい、とぼけた味の老練な政治家と言う感じですが、こういう人がひょっこり出てくるあたりに、伊達に日本を背負い続けているわけではない自民党の底力があると思います。
Posted by 子泣きじじい at 2007年06月22日 08:46
[消費税増税 - 税率 10%, 16%, 18% or 30%?]
’07参院選:全候補者アンケート 消費税、自民「引き上げ論」74%−政党:MSN毎日インタラクティブ
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20070714ddm003010048000c.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/images/20070714dd1dd7phj002000p_size8.jpg

財界や政府・自民党から消費税増税・法人税減税大合唱
http://www.toshoren.jp/Ctg-Toshoren_Undo_News/news2007_06/news2007_06-02.htm
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/news/3695/1184750808/
米国からの便り 消費税が16%?
http://kensirou2001.blog79.fc2.com/blog-entry-67.html
八国山だより 消費税を16%に
http://patience052.blog101.fc2.com/blog-entry-4.html

日本経団連意見書:「近い将来の税制改革」についての意見 消費税率引上げの展望
「消費税率を、第一段階として3%程度は引き上げるべき」
「消費税率を遅くとも2007年度までには10%とすべきである。」
「消費税で賄おうとすれば30%以上の税率」
「2025年度までの消費税率の増加を18%程度までに」

経団連の40億円の政治献金「斡旋」は何をもたらすか
3.(2)(i)A 消費税の税率引上げ
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/hikita/JapaneseEconomy/2007/SEIJIKENKIN.pdf
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/hikita/JapaneseEconomy/2007/SEIJIKENKIN.pdf#page=9
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5404

棄権は危険!そのわけは??
http://senkyo2.seesaa.net/
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5348
言戯: 選挙に行かない人って、バカだなあ。
http://maruccho.way-nifty.com/sobae/2004/07/post_19.html
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5353
Posted by No More Tax at 2007年07月21日 17:37
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Tracked: 2007-06-22 08:28

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