2007年06月05日

「ふるさと納税」と、地方経済について

 きょう5日付けの日経新聞に、
「上場地銀、15%減益」
と報道されていた。

 記事によると、株式を上場している地方銀行89行・グループの、2007年3月期決算は、連結純利益が前年比15.2%減の6800億円となった。
 実質業務純益が伸び悩んだほか、不良債権処理損失も膨らんだ。
 不良債権比率、純利益の減少幅とも、大手銀行(都市銀行)に比べ、全般に状況が悪いという。

(ただ、もちろん、地銀・グループのなかにも優良行・グループはあって、地銀内でも、経営体力の格差が拡大している面もあるようだが。)

 ここでも、
「大都市(を抱える地域・自治体)と、それ以外の地方の、格差」
を、実感せずにいられない。

■ふるさと納税の、メリットとデメリット

 地方格差是正を図る政策のひとつとして、「ふるさと納税」が取り沙汰されている。

 納税者が、住民税の一部を、故郷などの自治体に納めるものだ。
 試算では、個人住民税(地方税)の1割程度で、2007年度税収見込みでは、1兆2000億円規模という。
 総務省は今月から、学識経験者らで構成する「ふるさと納税研究会」で、制度設計を始めている。

 私自身は、地方(山口県下関市)出身で、現在、東京都中央区に住んでいる。
 以前、このブログでも、「東京は『中央』ではない」とか「山口県下関市、うちのムラが一番」とか書いてきたとおり、かなり地元びいきだ(笑)。
 なので、
「ふるさと納税? いいじゃん」
と、単純に思っていた。地方格差解消の一助となるなら、尚さら良い、と。

 しかし当然、税制ってのは単純ではない。報道や、専門家の意見を見ると、ふるさと納税は、一長一短のようだ。(次に挙げるメリット、デメリットは、税制・行政のシロートである私がまとめた内容なので、間違ってたらすみません)

【メリット】

・ 地方で育ち(教育などを受ける=税金を使う)、大都市で働いている人の場合、受益者負担の「後払い」となり得る。
・ ふだんは都心に住み、週末や長期休暇は地方の別荘で過ごす人なども増えており(あるいは、今後、団塊世代の大量退職で増えるのではないかと見られており)、受益者負担の原則そのものを再検討する時期に来ている。(税金とは違う話だが、別荘地の水道問題とかを類推すれば、分かりやすいかも)
・ 納税者の「地元に頑張ってほしい」という志が伝わり、地域の自立が期待できる。
・ 地域活性化のツールとなり得る。
・ 税金の使われ方に対する納税者の関心を高めるきっかけになる。
・ 自治体間に競争的な環境を作り出すので、情報発信、情報開示、行政サービスの質や効率の向上効果が期待される。

【デメリット】

・実際のところ、税収格差是正の効果はあまり期待できない。
・ その場しのぎで地方税の配分ルールを変えると混乱する。
・ 各自治体は、毎年、どれだけの税収があるかという見通しが立てにくくなる。
・ 本当に収入が必要な地域に資金が回るか、疑問。
・ 「ふるさと」の要件に該当するかどうかを個別に認定する必要があるなど、税務執行上のコストが高くなる。
・ 自治体間に競争的な環境を作り出すので、PRなどの過当競争激化や、そのための余分な予算がかかる懸念がある。

【その他】

 また、ふるさと納税議論に関連して、
・ 地方間の税の水平移動ではなく、国から地方へのいっそうの税源移譲が重要。
・ 住民税だけでなく、外形標準課税(儲けの金額ではなく、事業規模に応じて課税する)の拡大等で、事業税をガッチリ取ることも議論すべきだ。
――といった意見も見られる。

■税金も、経済も、ただの数字ではなく

 先日、日経夕刊のコラム『十字路』で、
「明るい声が聞こえてこない」
と題して、地方経済はまだまだ悲惨だということが書かれていた。

 実はこのコラムで、大阪学院大学の国定浩一教授が書いている回、私は楽しみに読んでいる。これまでも、
「地方と中小への配慮を」
「格差、その現実の直視を」
「地方も傷んでいる」
「いざなぎ超えの幻、個人も企業もおきざり景気」
などなど、読んでは、溜飲を下げたものだ(笑)。

 先日のコラムには、こうした、これまでの内容を掲げ、
「日本の現実の、地べたの社会の移ろいが、目に見えるようではないか」
と書かれている。

 そのコラムの一部を、少し長いが、引用(要旨)する。

「5月に発表された本年1〜3月期の国内総生産の実質伸び率は年間算で2.4%であり、堅調な成長維持、とする報道が、各紙の1面を飾った。
 しかし、私の住んでいる大阪の紙面には、
『1〜4月の倒産件数をみると、関西が高水準で、自動車を中心に好調な中部の2.6倍』
とあった。
 関西では建設、飲食業、IT関連業を中心に、負債総額1億円未満の倒産が8割を占めているともある。
 これは関西特有の現象ではなく、地方、あるいは中小企業の象徴的数字だろう。」

 私は、税制も行政も、地方経済のこともサッパリだが、
「今回のふるさと納税の税制議論に限らず、机上の理論や、制度設計がどうの、という話だけではなく、生活者の実感を踏まえた議論をしてほしいなあ」
とだけは、生活者の1人として思う。
 税金を払うのも、使うのも、十把一からげの「国民」や、ただの数字ではなく、1人ひとり、仕事をし、生活をする「人」なのだ。


posted by 田北知見 at 18:22 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | あの業界!こう見る
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