2007年05月10日

源氏物語の女性群像

 きら(←作者名)のマンガ『GENJI −源氏物語−』を読んだ。

 デビュー直後の作品『まっすぐにいこう。』からの、きら のファンで、ほぼ全作品を読んでいるのだが、源氏物語は興味がないので、これだけは読んでいなかった。

「源氏物語って、プレイボーイ(←死語か?w)が、女性をとっかえひっかえする話でしょ? 誰が読みたいものか」
と、思っていた(笑)。

 平安時代って、なよなよしたイメージで、あんまり興味がないし。
 やはり、ロマンと野趣あふれる古代・上古や、質実剛健 鎌倉時代や、シックな侘び寂びの室町時代や、風雲急の戦国時代、維新回天の幕末、とかのほうがおもしろいし、興味は尽きない。

 きら の『GENJI』は、現代女性好みに脚色されているので、わりかし読みやすかった。なんか、光源氏、結構いいヤツに脚色されてるし。

 それと、古典や歴史もののマンガに多い、「あらすじや解説に、コマ割りの絵がついてるだけ」という作品とは、一線を画している。ちゃんと、人間ドラマになっている。

■なぜ女性がプレイボーイの話を書いたか

 私はずっと、
「紫式部、女性のくせに、なんであんな、男に都合のいい話を書いたんだよ」
と思っていた(笑)。
(もちろん、そういう時代だったというのは、解っている上で)

 その理由のひとつは、彼女の雇い主である中宮 彰子(といっても実質的な雇い主は、彰子の父 藤原道長だろうが)のほうへ、一条帝のお渡りを促すために書かれたものだからだろう。

 もうひとつ、私が思ったのは、紫式部は、フィクションで、自分の理想の男性をえがきたかったのではないか。
 イケメンで、身分が高く、教養にあふれ、頭が切れて、もののあはれに通暁していて。って、そんなカンペキな男性、おるかい!?と、ツッコミたくなりませんか?(笑) 私だけですか…?(笑)

 また、紫式部は、いろいろなタイプの女性をえがき、いろいろな女性の生きざまを、えがきたかったのではないか。
 そうして、物語をつうじて、読む人に、女性の生き方を考えさせたかったのではないか。と思ったりした。

■源氏物語、どのキャラが好き?

 源氏物語というと、よく、
「どの登場人物が好きか」
みたいな話になる。

 私は原典を読んでいないので、何とも言えないけど、
マンガ『GENJI』を読んだ限りでは――、

 【葵の上】かな。
 光源氏の最初の正妻。プライドが高くて、気の強いところが好きだ。強がりが、かわいいし、あわれでもある。

 そして、【朧月夜】。
 彼女も、美人で、気が強くて、好きだ。
 朱雀帝の寵愛をガッツリ掴みつつ、光源氏とも浮名を流し。しかも、遊びだと割り切って楽しんでいる。そして、何だかんだいって、自分の意志を通している。理想的かも。

 あとは、【空蝉】。
 光源氏と、一夜限りの契りで、姿を消す。フラれる前に、振る。いいねえ、その潔さ。と思ったが、はっ、でも、もしかして……、男性にとっては「都合のいい女」?

 いや、究極の「都合のいい女」はむしろ、【夕顔】かな?
 ひたすら受け身。そして、光源氏から、まだ惜しまれているうちに、死んでしまう。
 私はそういう、なよなよした人は、あまり好きではないけど(笑)。夕顔は、美人薄命の代名詞?みたいになってるらしい。

■【紫の上】は「負け犬」か

 以前読んだ、酒井順子の対談集『先達の御意見』では、瀬戸内寂聴との対談で、源氏物語が取り上げられていた。

 その対談は、ちょうど、酒井氏の著書『負け犬の遠吠え』が話題になっていたころに行なわれたらしく、瀬戸内氏は、
「究極の勝ち犬は、【藤壺】」
「【紫の上】こそが、負け犬」
と断じていて、私はビックリした憶えがある。

 【藤壺】は、桐壺帝の寵愛を一身に(つまり、他の多くの妻たちをさしおいてw)受けつつ、桐壺帝と、亡き桐壺更衣との息子である、光源氏とも逢瀬を。
 つまり、現代のメロドラマ風にいうと、彼女は、地位も経済力もある男性の正妻の立場を守りつつ、義理の息子である、先妻のイケメン息子とも不倫をして…みたいな感じか(笑)。

 そして、藤壺は、自分と光源氏との間に生まれた子どもを、世間には、のうのうと桐壺帝の息子としてとおし、光源氏の力も利用して、まんまと息子を帝位につける(冷泉帝)。
 確かに…究極の勝ち犬だ。

 一方、【紫の上】は、子供の時に光源氏に引き取られて、光源氏好みに育てられ、その後、今風にいうと事実婚の妻になった、とされている女性だ。

 光源氏とずっと一緒に暮らし、彼のたくさんの妻やガールフレンドのなかでは、かなり長期にわたって一緒にいた人で、一般的には、勝ち犬だと思われているはず。

 きら の『GENJI』でも、脚色されているとはいえ、紫の上は、光源氏に、最初から最後まで、とても大事にされている。

 しかし瀬戸内氏は、
「紫の上は、光源氏の子供を生んでいない」
「出家(当時、女性が男性との関係の懊悩を断ち切るには、これしかなかった)をさせてもらえなかった」
「最後まで、(他の女性たちへの嫉妬などで)心の平安を得られなかった」
という理由で、紫の上を負け犬だと断じているのだ。

「そおか…。男女道は、奥が深いのだなあ……」
と、その道の入口にすら立ったことのない私は、ため息をつくばかりである(笑)。


posted by 田北知見 at 14:35 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | よいこの読書感想文
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