2006年09月20日

今でもよく見るシーン

 連休中に、東京・竹橋の東京国立近代美術館で『モダン・パラダイス展』を観た。
 展示されている絵自体はそう目新しいものではない(偉そうですね、すみません)のだが、ゴーギャンと萬鉄五郎とか、モネと菱田春草とか、おもしろい組み合わせというか、比較みたいな感じで展示をしてあった。

 私がハッとしたのは、常設展のほうの作品だった。以前に行った時と、展示作品が一部変わっていた。

 ひとつは、アメリカの写真家の作品。
 タイトルは『星条旗を持った愛国青年』みたいな題名だったと思う(うろ覚えですみません。以下に述べる内容も、記憶と勝手な推測だけを頼りに書いているので、間違ってたらすみません)。
 軍服を着た白人の青年が、星条旗を握りしめ、薄笑いのような、呆然としたような表情を浮かべている。瞳孔は開いたように見え、ちょっとゾッとする感じ。
 作品は1960年代のものなので、ベトナム戦争に行って正気を失った人なのかな、とか、逆に、記者会見か何かで「ベトコンを○○人、殺してやったぜ」と意気揚々と言っているところかな、と思った。
 いずれにしても、私はゾッとした。

 もうひとつは、日本の絵で、題名は『犠牲者』。
 血まみれでボロボロになった人が、手を縛られて吊るされている。画面の端には、鉄格子の嵌まった窓が描かれている。写実的ではなく、人物は、少し抽象的にというか印象派的にというか、ぼやかされているが、一目で、拷問に遭った人だとわかる。
 描かれたのは、1930年代だった。その時代に、よくこんな絵を発表できたな、と、まずそれに驚いた。たぶん、中国大陸か朝鮮半島で、軍人が現地人を拷問した絵なんだろうと思ったのだ。
 しかし、窓の部分を見ると、日本っぽい。
「……?」
 近くに、一緒に展示されている絵と版画を見てわかったのだが、たぶん、これは労働運動か何かをしている人が、特高か何かに拷問された絵なのだろうとわかった。
 この人物は、このあとどうなったんだろう。いや、もうこの絵に描かれた時点で亡くなっていたのかもしれない。
 この絵を描いた人物は、当時これをどこかで展示発表したのだろうか。それともずっと公にはせずに持ち続けたのだろうか。どんないきさつを経て、今ここに展示されているのだろうか。
 などと、いろいろ思ってしまった。

 その絵の近くに展示されていた版画は、小さな3枚組だった。1枚目はたぶん、ビラ撒きかアジテーションか何かをしている画。2枚目は確か、検挙か拷問のシーンだった。3枚目は、亡骸になって戻ってきたその人物に、母親か妻らしき女性が取りすがって泣いているところだったと思う。
 3枚目の画みたいなシーンは、今でもよく見る。イラクやパレスチナやレバノンの、空爆やテロのニュースの映像で、よく見る。タイでも見ることになるのだろうか。見たくはないのだが。


posted by 田北知見 at 11:06 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | よいこの美術鑑賞
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