2006年09月19日

「東京」≠「中央」

 過日、日経新聞の「地域間格差をどう是正するか」という記事で、次のような内容の記者の意見が載っていた。

「所得水準の低い地域は、低賃金で労働者を雇えるという利点を生かして…」
「工場を誘致できなければ、代わりに労働者を輸出すればどうか。…生産性と所得が低い地域から高い地域への労働移動は、経済全体の生産性の向上にも貢献する」
「公営住宅等を整備して、周辺過疎地域の高齢者を集め…」
「人の住むところに新たにに社会資本をつくるのではなく、社会資本のある場所に人が移り住むことを支援する。これが…現実的な政策であり…」

 この記者の目には、東京や大都市以外の場所は、経済的にも能力的にも貧困な人々の住む、生産性の低い、後れた、何の価値もない場所に見えるのだろう。
 この記者は、何の権利があって、「生まれた場所にずっと住んでいたい」という人たちや、地元の歴史や文化が好きな人たち、田舎の良さが好きで住んでいる人たちに対して、大都市圏に移住しろと言っているのだろう。ヒットラーみたいなことを言ってるなあ、とビックリしてしまった。

●地方って意外といろいろあるのに

 東京の人は、東京が日本の中央だと思っている。まあ、ある意味では正解なのだが。
 でも、東京の人は気づいてないだろうけど、地方にも人間が住んでいて、地元の歴史や文化もあるんだよ、といつも思ってしまう。
 地方の支店に「飛ばされた」とか「島流し」とか言うのを聞くと、うーむ…と思ってしまう。東京の人が「東京こそ一番」というのは、地方の人が「おらが村が一番だべ」と言うのと同じじゃん、と思ってしまう。
 まあ、1000年以上昔、菅原道真の時代から「地方」イコール「左遷」だったけどさ。

 大学の時、鹿児島市出身の友人が、冗談半分で(てことは本気半分か?)「鹿児島を日本の首都に」と言っていた。
「ええっ? 最南端の鹿児島を?」
とツッコむと、彼は「南西諸島まで含めた日本の版図からすれば、鹿児島県は必ずしも最南端ではない」と言い張っていた。

 鹿児島県知覧町の町立博物館では(私が旅行した時の記憶によると)、日本と東南アジア諸国の、農具や民話についての共通点などを映像展示していた。

 鹿児島県のたとえば坊津(現 南さつま市にある)は、古代〜中世にかけて、中国大陸への出港地として、また、中国、琉球、東南アジアとの大貿易港として栄えていた。
 その時代から江戸時代にかけて、薩摩藩は南西諸島の盟主であり、現在の鹿児島市はその「中央」だった。

 そういえば、福岡市の人の中には、福岡以外の九州内の出身者を、
「地方から来ている人」
という人がいた。
 大学の時、福岡に住み始めて最初に聞いた時にはビックリした。福岡こそ地方じゃん、って。でも福岡の人にとって、福岡は九州の中央なのだろう。

 青森県の十三湊(現 五所川原市内)も、中世は中国大陸との貿易港として、かなり栄えた大きな町だったらしい。
 坊津も十三湊も、私は行ったことがないが、現在は静かな町らしい。

 私が新潟市に旅行で行った時、地元の人に、
「田舎でしょう?」
と言われたので、「いえ、そんなことないです。すごく大きな街ですね」と答えたら、彼は誇らしそうに、
「ええまあ。日本海側では、ここと金沢市が1、2を争う大きな街なんです」
と言っていた。
 日本海側では。
 そういう発想があるのか、と思った。

 北海道は、私のイメージでは、寒い寒い北のはての国だった。
 しかし数年前、網走市に旅行して『北海道立北方民族博物館』に行って以来、考えを改めた。その時初めて知ったのだが、イヌイットとかラップ人とかの「北方民族」というくくりで言うと、アイヌは最南端の人たちなのだ。北海道が最南端…うわー…。
 そういえば10年以上前、歴史雑誌を読んで『オホーツク文化』というものがあると知って驚いたことがある。5〜13世紀の、オホーツク海を囲む地域固有の文化だ。
 でも考えたらシベリアやカナダ極北地域、北欧にも古くから人が住んでいたのだから、驚くにはあたらない。

 周辺国も一緒に描き込まれた日本地図を見ると、北海道や日本海側北部はロシアに近いし(稚内市内かどこかだったと思うが、ロシア人の船員さんがよく上陸する、港近くのお店にはロシア語の表示が貼ってあるらしい)、山口県や福岡県は朝鮮半島や中国大陸に近いし(街なかの表示にはハングルや中国語がけっこうある)、南西諸島や沖縄県からは台湾やフィリピンがすぐの場所にある(以前、奄美大島出身の人が冗談で「英語は苦手だが、タガログ語なら堪能だ」と言っていたw)。

 というわけで、東京は必ずしも中央ではないのだ。


posted by 田北知見 at 10:48 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 〜について思ったこと
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