イギリスの作家ネビル・シュートが書いた小説『パイド・パイパー 〜自由への越境』(池央耿 訳)を読んだ。
舞台は1940年、戦時下のフランス。イギリス人の老紳士と、子供たちが、ナチスドイツ軍の侵攻とパリ占領をかいくぐり、イギリスへ脱出する。
小説が書かれたのは1942年。つまり、第二次世界大戦のまっただなかで書かれたものなのだ。
(ノルマンディー上陸作戦は1944年、ドイツと日本の降伏は1945年。)
つまり、書かれた当時は、この戦争がどうなるか、将来どうなるのか分からなかった。
(とくにこの時期は、ナチスドイツが優勢だった)
なのに、とても冷静に、リアルに書かれている。
空爆で人々が殺される光景も、そのため親が死んでしまった気の毒な子供も、味方の兵士も、主人公たちを助けてくれるフランス女性も、敵であるはずのドイツ将兵すら、人間として、リアルに描写され、かつアングロサクソン的な控えめな言動や表現が用いられている。
イギリスがヨーロッパ大陸とは一衣帯水だったため、対岸の火事的な面もあっただろう。
(でももちろん、ロンドンも空爆を受けているのだが)
困難な状況下でも、冷静に、ただただ自分の役割と責任を果たそうとする主人公を見ていると、
「やはりアングロサクソンの人って、すごい」
と思ってしまう。
■現場を知っている人がリアルタイムで書くと
そういえば、石川達三の小説『生きてゐる兵隊』を読んだ時も、驚いたのだった。
私は都内の図書館で借りて読んだのだが、閉架図書だったので、司書さんに頼んで出してもらった。それが1938年の出版当時の本で、仰天した。旧かなづかいで、伏字がかなりあった。
が、そんなことは全く気にならないくらい、ほとんど一気に読んだ。
リアルな描写と、冷徹かつ淡々と進むストーリーに引き込まれた。
(書かれてある内容は残酷なのだが。たとえば、冒頭、いきなり日本兵が中国人を殺すシーンで始まる)
戦後、多くの作家が書いた、涙涙の物語とは全く違う。
ただ、殺す。ただ、殺される。悲惨で血も涙もない(いや、血はいっぱい流れるが)戦争の現実を、いやというほど見せつけられる。
石川達三は中国戦線に従軍取材し、その当時にこの作品を書いている。
現場を知っている人がリアルタイムで書いたものならではの迫力だと思った。
2008年12月25日
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